第4章 𝕂𝕒𝕝𝕒𝕟𝕔𝕙𝕠𝕖 𝕦𝕟𝕚𝕗𝕝𝕠𝕣𝕒
小学校に上がってから私を悩ませたのは誘拐未遂事件
初めは「お菓子上げるよ?車乗る?」と声を掛けられる程度だったのに、無視を決め込む度に相手のやり方は強行突破になっていた
まる半日拘束されたときは流石に両親にもバレてしまい、血相変えたお母さんの顔が忘れられない
その時点で私の転校の話は出ていた
私は勝己くんにその話をした。もちろん学校で騒ぎになっていたし、数日間は先生の付き添いのもと下校していたから
「ふん、そんなヤツオレが爆破してやんのによ」
『でもね、相手はオトナだよ…?
怖い顔するし、武器とか持ってるかも…』
「関係ねぇーよ
オレのヒーロー活動はお前を守ることが絶対なんだよ」
その時勝己くんの中で私を守るということを、約束のように受け止めていることを知る。同時に胸がひび割れていく感覚だった
今の私の言葉を借りればそれは"縛り"のうようなものだと思った
そして最悪の事態を招いた
下校中の私の横を車が止まり、ナイフをチラつかせ車に乗るように誘う。いくら幼少期の強気な私でもナイフはこの世の何よりも恐ろしいものに映ったと思う。
声を押し殺し涙を流しながら、後部座席に乗ろうとした時
「そいつから離れろ!!!」
パチパチという効果音で涙が引っ込む
勝己くんがわたしの腕を掴み取り、庇うように後ろへとやる
ナイフを持った大人は勝己くんに対して遠慮なく、そのまま突き刺そうとした
一度は避けたものの、私が背後にいることを気遣ったからだと思う
二度目の突きで頬の部分を掠めてしまう
少量に滴る血を見たとき、私はようやく自分がしてることに思い知らされた
守られるということは何も出来ない
どれほど惨めな行為だと
『…………やだ』
気付けば勝己くんが私の腕を引き、近くの公園まで来ていた。薄っすら覚えてるのは私達の様子を見ていた近所の人が通報してくれて、警察がやってきたとこまでだ
お互い地べたに座り込み空を見上げていた。勝己くんの格好はボロボロで目には淡く光るものが輝いていた。
私はそっと勝己くんの頬の傷口に手を添えた
『ごめんね…わたしのせいで…ケガさせて』
「こんなのケガの内に入らねぇーっつーの」
『ウソ…すごく痛そうだよ…』
「なんでお前が泣くんだよ、オレは痛くねぇんだからいいだろ」