第4章 𝕂𝕒𝕝𝕒𝕟𝕔𝕙𝕠𝕖 𝕦𝕟𝕚𝕗𝕝𝕠𝕣𝕒
喉からするりと自然に出た。視界に映る彼は大きく目を見張らせ、言葉を失ってるように見えた
張っていた頬に水滴が流れ沁みていく。気付けばそれは目から溢れんばかりに放出され両手じゃ抑えきれないほどだった
無意識の内に後退り、体がガクッと傾く
階段のフチに足を滑らせ体がどんどん落下していく
爆豪くんが瞬時に顔色を変え
私に向かって大きく手を差し伸べてくれる
伸ばされた手は私の手首を捕まえるも、巻沿えになり爆豪くんごと体が浮く。爆豪くんは空中で力一杯私を引き寄せ、庇うように私の体を覆う
やっぱり"勝己くん"だ
私はその温もりに目を閉ざし、あやふやだった記憶のパズルを丁寧に一つ一つ当てはめていく
それはとても幼くまだ未完成な自分の世界
小さくどれほど浅く映っていただろうか_____
まだお人形さんに囲まれ、おままごとに熱中していた幼少期時代
よく親がいないところで他園の子(主に男の子)にからかわれることが多かった
お母さんのお迎えを待つ時間、公園で遊んでいる時間
ところ構わず現れ、嫌がっても力ずくで腕を引っ張られる
『いやぁ!わたしもう帰らなきゃ!』
「ナマイキだぞ!おれ様が気に入ってやってんだから一緒に遊ぶんだ!」
今思えば訳がわからなくて、子供の私のほうが他人に対して抵抗を示していたほうだったかもしれない
いつもなら引いてくれる彼らも、この時の男の子はなかなか引いてはくれず、数十分近く腕を掴まれていた
「お前の個性じゃあおれ様に勝てないくせに!」
『…勝てるもんっ!!そんな事言う子とは遊ばないもん!』
多分お互い意地になっていた言い合いはどんどん加速させ男の子はとうとう私に向かって左手を振り上げた
わたしは身を屈め、来るだろう痛みに耐えようとした
けどそれは来なかった
小さな私にとっては十分事件性を匂わせる大きな爆発音が耳にこだましていた
線香花火のような火花を両手に散らす男の子がこちらへやってくる
幼い私の彼への第一印象は゛輝いている゛だった
「お前はヴィランだな!オレがやっつけてやる!」
誰から見ても一方的だった
彼が引き起こす爆発に男の子は怯えて逃げ帰る
けれどわたしは困っていて、それを助けてくれたのは紛れもなく"勝己くん"だった
その姿はテレビで見るオールマイトとなんら遜色なかった
