第4章 𝕂𝕒𝕝𝕒𝕟𝕔𝕙𝕠𝕖 𝕦𝕟𝕚𝕗𝕝𝕠𝕣𝕒
連れられた場所はまさしくあの階段場で
爆豪くんは私を引きずるように容赦なくズンズン進んでいくものだから首が押さえつけられグエッと何度声を上げたか
床に投げ出されるように首が解放され、私と爆豪くんの間に会話を拒絶したような沈黙が流れる
暫くして爆豪くんは私に背を向ける
去ろうとする背中に咄嗟に声を掛けてしまう
『…爆豪く…っ?どこいくの』
「帰んだよ!」
『なんで……?』
主語がない"なんで"は爆豪くんには伝わったみたいで足を止め、顎からこちらへ振り返る
「…生憎無気力なヤツ痛める趣味は持ち合わせてねぇわ
やる気のねぇてめェ潰したところでシラケるだけだろーが」
…じゃあどうして私をここまで連れてきたの??
なんで無視しなかったの?
…どうして私を抜け出させてくれたの?
『じゃあ、なんで…私を連れ出してくれたの』
きっと今度の"なんで"は伝わらないと思っていた
だって私が轟くんを前にすると、おかしくなってしまうなんて彼は知らないはずだから
あの場から逃げたかっただなんて彼は知らないはずだから
私の気持ちなんて分からないはずだから
「知んねぇよ、てめェが逃げたかったんだろうが」
爆豪くんは鬱陶しそうに歪めた顔を向ける
……なんでなんでなんで、分からない
目の前の彼は私が逃げたいってわかったから連れ出してくれた
『…わたしのこと…嫌いなんじゃないの…?』
悄然と項垂れる私を見て、爆豪くんはあからさまに溜息をついて「ウゼェ」と声を漏らす。自分の中にある目覚めようとする得体のしれない記憶に体が震える。収めようと両腕で自分を抱き締める
『…変だよ、わかんない
私たち初めて会ったはずなのに…!
なのにこの人は違うって心の中で理解してた…』
違う…"理解してた"じゃない"知ってた"の
爆豪くんの体は完全にこちらに向けてあり、黙って私のたどたどしく紡がれる言葉を聞いてくれる
『爆豪くんにどれだけ自分の不甲斐なさを突きつけられても爆豪くんならいいって思えたのっ
懐かしくて、苦しくて…おかしいくらいっ』
゛オレはここで一番になってやる!!! ゛
『………勝己くん…?』