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花水木が咲く頃に ꕥヒロアカꕥ

第1章 𝔸𝕗𝕣𝕚𝕔𝕒𝕟 𝕔𝕠𝕣𝕟 𝕝𝕚𝕝𝕪




微かに届いたその幼い声に耳を研ぎ澄ませる
パチパチと火花が弾ける音と間違いなく、小さい男の子の泣き声


けれどそれは炎と炎の間の僅かな道の奥から
思わず体が強張るあの奥にお母さんを探して男の子が泣いている


ヒーローはまだ来ていない
まだ私は…助けてもらうのを待つの?


躊躇いを振り切るように足元に力を込め、男の子の元へと一直線に走る。この瞬間は自分の身なんて頭から抜け落ちとっくにどうでもよくなっていた。

呼吸することも忘れ、私は男の子の姿を確認するなり力一杯抱き締める
小さな体をしたその子はビックリしたのか一瞬泣くのをやめ、目をパチパチとさせる

私はゆっくり顔を離し、目一杯水を貯めた瞳と目を合わせる
けど抱き締めた人物が母親じゃなかったのがわかった途端に彼は再び泣き出してしまった


この状況なんて忘れみっともなくオロオロしてしまう
…どうしよう…どうすれば泣き止んでくれる?
せめて安心させてあげたいのに


そこでどうにでもなれ、と私は片手を自身の胸の前に添え前に出す
『見てっ』と私が呟けば男の子は腕から顔を上げる


私は男の子の前で手のひらをゆっくり開いてみせた
そこには白色の光を放つ゛光の玉゛が浮かんでいる

男の子は目を見開き、涙を引っ込めた
やった!男の子が泣き止んでくれたことに喜んだのか
それとも自分の個性が役立って喜んだのかはよく分からなかった


それでも凄く胸が温かくて毛布に全身包まれているような感覚に陥る。私はその光の玉を彼の手元へと手渡す


『これはね、"光"なんだよ
私たちが必ず助かるっている希望の"光"』


もちろん、そんな効果はついていないけど安心してもらうためにはもう一押し必要な気がした


『この光がきっとお母さんともう一度会わせてくれるから』


こんな深刻な状況なのにも関わらず、自然と微笑んでいた。でまかせとか残酷だとかそんな言葉は私の中にはなく、男の子がその光を胸に当て握りしめてるのがとても温かく感じられた。




グシャ
その音に現実に引き戻される
炎に取り憑かれた街路樹は巨大な音を立てて、私たちの真上を目掛けて倒れてくる


あぁ、もうこれ以上は、
炎の衣を纏った街路樹はとても綺麗に燃えていてつい見とれてしまった

この子には見せられないや
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