第3章 𝔸𝕘𝕒𝕡𝕒𝕟𝕤𝕒𝕤𝕦
強い、か…
なんで轟くんの言葉はいつも私の心を動かすの
温かいものが体中を巡り、目元へとやってくる
せっかく褒めてもらえたのにここで涙を流すのは違う気がした
『ありがとう轟くん』
私達は止めていた足を動かし駅に向かう
並んで歩く2つの影の距離はまだまだ遠くて
それでもいつかもっと近付いて…
仲良くなれるといいなあ
「向いてない個性って言ってもアンタの個性知らねぇ」
揺れる電車内で吊り革に捕まった轟くんが瞬時に移り変わる景色を見ながら呟く。私は確かに、と思い自分の個性について彼に詳しく話した
…轟くんになら言ってもいい
そんな気がしたから
「発動型の遠距離戦向きか…オレと似てるな」
轟くんと似てる?!
私は目を見開き、以前窓に視線を落とす彼を見上げる
やっぱり思ったことを言っているだけなんだ
私の光と、轟くんの氷が同じなんてとてもおこがましいと思ったけど、またそんなことを言うのは気が引けた
『あとそれからね、 秋月 だよ』
私の放った言葉が意味不明だったのか
ようやく轟くんの視線が私に注がれる
車内に漏れる窓越しの光が彼を照らし、一層神々しく見えた
『わたしの名前、 秋月 ひかり』
ずっと私のことを"アンタ"と呼んでるのが気にかかっていた
せっかくクラスメイトになれたのだから
これくらいは許されるだろう
「すまねぇ秋月 」
『ううん、大丈夫!ありがとう』
いつかもっと近づけますように