第3章 𝔸𝕘𝕒𝕡𝕒𝕟𝕤𝕒𝕤𝕦
何気ない一言だってわかってたのに
他意なんて存在しないなんて、わかってたのに
自然と足が止まる
『…だよね!!
私の個性見てもあまり印象に残りにくいもん
轟くんの個性みたいに強くもなきゃ、派手でも…ない』
途中から皮肉になっていく言葉を止めたかった。こんな事を言ってるのに笑顔を無理やり作ろうとする自分に嫌気が差す
『ほら、轟くんも、一昨日言ってたよね
私の個性はヒーローに向いてないって
あ、責めてる訳じゃなくてね、本当にその通りだと思うの
素質がないんだぁ、自覚してて諦められないっていうのが一番…みっともないよね』
苦い
轟くんは今どんな表情をしてるのだろうか
こんな情けなくてどうしようもない私に呆れているのかもしれない。顔が見れなくて彼がいないコンクリートの壁へと視線をずらした
暫く返事がなく気持ちが落ち着いて、ようやく私は話を変えようとしたとき
「そういうところはあんま変わんねぇだな」
少しだけ、ほんの少しだけ
今まで話したどの声音より柔らかいトーンだった
「なんか勘違いしてるようだが
オレは別にアンタの個性が向いてねぇなんて言ったつもりはねぇ」
私は小さく『ぇ』と漏らし、その続きを促す
彼が私の前に現れたときと同じ高鳴りが襲う
彼は私にとってただのクラスメイトなんかじゃない
「自分の力じゃどうにも出来ねぇことなんて山ほどある
いちいち自分の不甲斐なさに直面して落ち込んでたらきりがねぇだろ」
自然と轟くんの顔を捉えたくなった
目が合うとその真剣な眼差しに逸らしたくなったけど
轟くんの瞳がそれを許さないような気がした
「オレは助けて貰いたいと思わねぇ
そんな失敗してもいい理由を用意してる奴には
…でもあん時、言っただろアンタ」
唇を八の字曲げ、込み上げそうになるものを必死に堪えた
あの日叫んだ言葉が耳に余韻として残っている
私が…私の気持ちに素直になれたとき
゛今度は私がアナタを助けるから!!!!゛
「すげぇ強ぇ奴だなって思った」