第2章 ℍ𝕒𝕣𝕕𝕖𝕟𝕓𝕖𝕣𝕘𝕚𝕒
最寄り駅から家まではさほど遠くない
これなら私一人でもなんとかなりそうだ
『今日は何度も助けてくれてありがとう…
この借りは必ず返すからね!』
深々と頭を下げいつの間にか自然に笑えていることに気付く
あんなに暗く沈んでた気持ちが嘘みたいだ
「別に返さなくても構わねぇが…」
そう呟いたあと「じゃあな」と聞こえ
再び向けられる背に慌てて声を掛けた
『あ、あの名前聞いちゃダメかな??』
助けてくれた人の名前を知りたいと思うのは普通のことなのにどうしても緊張が拭えない。俯きがちな顔に静かな低音が降ってくる
「今聞かなくても明後日になれば嫌でも知ることになるぞ」
私はその言葉の意味が分からなくて目を丸め彼を見つめる
分かんなかったけど、彼とはきっと…いや絶対また会える気がした
確信も何もないその思い込みにまぁいっか、と思い私は薄く微笑み彼と別れた
無事にたどり着いたアパートは日当たりもセキュリティも文句無しで築年数が新しいだけはあるなと思った
次の日は入学準備に手一杯で外に出て散歩するのもままならなくて
その日の夜は緊張で眠れないだろうなぁと思っていたけどいざベットに横になれば数分も経たずに夢の中へ落ちた
𓈒 𓏸 𓐍
私はずっと走ってた
知らない町並みを目の辺りにしながら、闇雲に
ただ前へ”彼”が行ってしまった方向へ
_____あぁ、そうだ
私には好きな人がいる
どうしてもその人に会いたくて
傷つけたことを謝りたくて
私を選んでほしくて
走ってるんだ
息が切れても体の感覚がなくなっても
まるで今日みたいに必死で足を動かした
ようやく見えてきた彼の横には女の子が立っていた
私はその子に見覚えがある
私は彼の名前を口にするけど
"今度 " は届かなくて
彼はそのまま隣の彼女を抱き締めた
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