第6章 𝔽𝕠𝕦𝕣 𝕠'𝕔𝕝𝕠𝕔𝕜
『どこにって…そんなの見ればわかるじゃん〜』
「爆ぜんぞ」
クスッと笑うと勝己くんはケッとそっぽを向く
勝己くんのことだから体育祭相当気合が入ってるんだろうなぁ
…私だって入ってるけど
そう思ってると勝己くんが私に向かって手を差し出す。何がなんだかわからなくて首を傾げているとぶっきらぼうに言い放たれる
「スマホ出せ」
『え、なんで?』
「いいからとっとと寄越せ」
パスワードを解いて渡すと、何か操作し始める
終わったのか画面から顔を上げ、ぽんっと私のスマホを投げて返す
『投げないでよ、何したのー?』
勝己くんは私の質問には答えないでじーぃとこちらを睨んでるだけで、仕方なく自分で確認するとラインに勝己くんのアカウントが登録されていた
「一分以内に返信しねぇとブッ殺す」
『そ、それは無茶苦茶!せめて十分!』
いやそれも難しいのでは…と思っていると勝己くんが大きな一歩を踏み出して私との距離を一瞬で埋める
目の前に立った勝己くんを見上げると急に両頬が引っ張られる感触を覚える
『ひゃにひゅんの(何すんの)』
「ブッサイクだな」
片方吊り上げて悪い笑みをつくる勝己くんに苛つきを覚えながらも不快感はなかった
むしろ自分の中で少しだけ余裕ができて安定していくのがわかる
「またなんかうじうじ悩んでんだろッ」
勝己くんの言葉にドキッとする
私を見下ろす三白眼は一体何を考えてるんだろ
『ひゃんでわひゃるの(なんで分かるの)』
「おいムカつくからちゃんと喋れや」
誰のせいだと…
それと同時に頬を引っ張っていた手が取れる
つねられていたせいでジーンとした痛みに襲われられる
『…悩んでること、あるよ
でも前と違ってはっきりさせるには時間が必要なの』
「そうかよ、触れれば温かくてなんたらってやつはもういいのかよ」
温かくて安心する
前はこの言葉に心地よさを感じていたのに
今はお互いを縛る呪縛のように聞こえる
『私…轟くんのこと…』
好き、なんだよ?
好きっていいたいのに
なんで私の邪魔を"私"がするの……?
『…わたしっ』
その瞬間体がグンッと前に引っ張られ、勝己くんの胸板に顔がぶつかる