第6章 𝔽𝕠𝕦𝕣 𝕠'𝕔𝕝𝕠𝕔𝕜
背後から抱き締められ轟くんの両腕が私の腹部にガッチリ回される。手がお腹に触れたときのひんやりとした感覚に、自分がとんでもない格好で飛び出したのだと気付く
上半身下着にスカート…
思わず失笑が漏れ、次の瞬間彼から離れようと必死に抵抗を始めた
『いやぁ!!!離してッ!!やめ…』
「 秋月 …おいッ 秋月 」
巻かれてる手を振り払おうとするけどビクともしなくて、ひたすら体を捻らせる
『お願いっどけて!!離し…』
「大人しくしろッ!!!」
辺りがシーンと静まり返る
今の…轟……くん?
体から力が抜けて、糸が切れたように両腕がぶらんとぶら下がる
わたし…何やって…
幼稚めいた数秒前の自分の言動を思い出し打ちのめされる
轟くんはこんな私に呆れて怒ったんだ…
そう思うと引っ込んでいたはずの涙が逆流して戻ってくる
「…怒鳴って悪い」
「泣くな…」
その言葉は液体になって私の心に染み付いて安心させてくれる
轟くんの腕の手は緩ませ、私の体の向きを自分の方へと変える
今度はぼやけた視界でもはっきり彼の顔が見えた
走ってきたからかまだ少し息が上がってて、私を見つめる恍惚とした表情
視線に耐えられなくて思わず逸らしてしまう
その時肩に布状のものがかけられる
正体はブレザーで、サイズが私のより大きかったから多分轟くんのだと思う
現に彼は白シャツだから
彼は私の体を覆い隠すようにしっかりブレザーを前まで締める
『あ、ありがと…』
「…今度またこんな格好で外に出たら怒るぞ」
ヒェッと思いながら轟くんの顔を覗く
熱っぽい眼差しに全身が熱くて苦しくなる
轟くんの両手が頬を包むように添えられ
顔が徐々に私へと近付いてくる
お互いの鼻先がぶつかるところで形のいい唇が動く
「…オレ以外の男に見せるな
嫉妬で気が狂っちまうだろ」
その言葉に私は視界を閉じる
頬の手に力が入り、耳元まで這ってくる
ずっと、この瞬間を待っていたんだと思う
唇に柔らかい感触が走り、彼と私が繋がる
誰がなんと言おうと今この瞬間
世界に私達しかいない