第6章 𝔽𝕠𝕦𝕣 𝕠'𝕔𝕝𝕠𝕔𝕜
《 ひかりside》
『えっ…あぁ、えっとね
それに驚いちゃって…心配かけてごめんね』
轟くんは何も悪くない
ほんのり赤い顔に俯かれた瞳
それはいつもの轟くんで、この状況に私だけが過剰に意識して今にも逃げ出したい気分だった
「悪かった、着替えの邪魔しちまって」
何か期待、とかしてたわけじゃないの
…ただ…私は轟くんにとってどんな存在なんだろってこのときばかり深刻に考えてしまった
瞠目してる彼を見て、頬を伝っている涙に気づく
あぁ…もうめちゃくちゃだ
謝らなきゃと思って出た言葉はそれだけじゃ収まらなかった
『…ごめっ…わたし…ずっとへん…だからっ
轟くんの前だと…ほんとに…自分が自分じゃないみたいになるの…っ』
喋れば喋るほど涙は引っ込むどころか止まらなくて、轟くんがこんな私に呆れているかもしれないと思うとますます怖くて、逃げたかった
「… 秋月_ 」
『…わたしばかり…私ばかり…おかしくなるの
私だけが…意識してて…それが恥ずかしくて…
すごく悲しくなる…』
ぼやけた視界越しに、表情までは見えないけどこちらへ歩み寄ってくる轟くん
…来ないでっ
距離を開けたくて後退ると背後の机にぶつかって、完全に逃げ場なんてなかった
轟くんを前にすると平常心じゃいられなくて
でも会えれば嬉しくて、傍にいたくて
『…何も感じてないみたいで…!!
…轟くんの考えてること…分かんないよぉ』
言葉を言い切る前に私は教室を飛び出した
何もかも振り切りたくて少しでも彼と距離を開けたくてただ走る
悲しい、苦しい感情のほうが上回ったとしても彼の隣に"いたかった"
『ハァ…はぁはぁ』
あの日、追いかけてくれなかった
こんな言い方じゃ責めてるみたいでよくないのにそれでもあのあとずっと思わずはいられなかった
追いかけて私のことを見てほしかった、と____
『……わたしっ…いまだれの…』
「 ____何も感じてねぇわけねぇだろッ!!!」
はっ…!
つい足が止まる、ちょうど階段に差し掛かるところだった
周囲に反響し響くほどの声…一体だれが…?
頭で理解するのに数秒かかってしまう
その数秒の間で私は彼に捕まってしまう