第6章 𝔽𝕠𝕦𝕣 𝕠'𝕔𝕝𝕠𝕔𝕜
オレが急に黙り込み、ようやく 秋月 は自分のあられもない格好に気付く。すると、煙が立ち昇るんじゃねぇかってくらい顔を真っ赤にさせる。その表情がたまらなく愛おしくて、重ねて普段より露出された肌に下腹を熱くさせる
オレは出来るだけ彼女から視線を逸らして、内側から波立つものをぐっと堪える
『…悲鳴、上げてたろ
何かあったんじゃねぇかって心配で来た』
「えっ…あぁ、えっとね
それに驚いちゃって…心配かけてごめんね」
秋月 が"それ"と促したものに今度は視線を置く
そこには黒い虫みてぇな物体が図々しく横たわっている
…なんだこれ、おもちゃか?
オレは小さく安堵のため息を吐く
ともあれ彼女が無事で良かった
顔を上げたのと同時に 秋月 と視線が重ねる
憂いを帯びたその表情に胸が張り裂けそうになる
『悪かった、着替えの邪魔しちまって』
これ以上変な気起こさねぇうちに退散しねぇと
…これ以上 秋月 の顔を曇らせねぇためにも
背を向けようとしたとき、目に入ったもんに全身の身動きが取れなくなる。 秋月 の頬に一筋の光が溢れ、二滴三滴へと数を増やしていく
その神秘的な姿から声が出せず、目が離せなくなっていた
「…ごめっ…わたし…ずっとへん…だからっ
轟くんの前だと…ほんとに…自分が自分じゃないみたいになるの…っ」
途切れ途切れに紡がれていく彼女の声と、何かを訴えようとする必死な姿に胸が熱くなり、ものすごい勢いで鼓動が全身を駆け巡る
『… 秋月_ 』
「…わたしばかり…私ばかり…おかしくなるの
私だけが…意識してて…それが恥ずかしくて…
すごく悲しくなる…」
「…何も感じてないみたいで…!!
…轟くんの考えてること…分かんないよぉ」
消え入りそうな声が耳に届いたときには 秋月 はオレの横をすり抜けて廊下に出ていた
いま 秋月 何て言って…
『って…』
あの格好で今外に出られたら_____…
小さく舌打ちをしてすかさず 秋月 の後を追う
もう廊下の曲がり角に差し掛かり姿が見えなくっていた
走りながらブレザーを肩から脱ぎ腕に掛ける
゛…何も感じてないみたいで…!! ゛
『____
何も感じてねぇわけねぇだろ…ッ!!』