第6章 𝔽𝕠𝕦𝕣 𝕠'𝕔𝕝𝕠𝕔𝕜
《轟side》
…そろそろか
喉、乾いてるかもしれねぇ
教室を後にして、薄暗い廊下に足を落とす
自販機どこだったか
廊下のはずれから月がさして、奥が際どく明るい
靴音だけが廊下の先まで一直線に響き渡り辺りに人がいねぇことが分かる
自販機の前まで来たのはいいが
秋月 が何を飲むのか分からねぇ
『………』
何分経ったか、自販機の前ですっかり立ち尽くしていた
意外と知らねぇんだな… 秋月 のこと
入学してからずっと一緒にいて、知った気になってた
秋月 の好きな飲み物も家族構成だって何も知らねぇ
当然だろ
オレだって何も言ってねぇんだから
お金を入れて緑茶のボタンを押す
知りてぇ
から、オレのことを知ってもらう必要がある
ずっと話すか躊躇ってた家族のこと
軽蔑するような奴じゃねぇことは分かってる
でも恐れてる自分がいて、口を開こうとする度に不安に駆られる
゛てめェ ひかりのこと好きなのかよ゛
なんで知りたいのか、どうして不安になるのか
゛好きだわ、文句あんのかよ゛
『……………………"好きだから"』
自販機がガタンゴトンと音を立てて飲み物を吐き出す
「きゃぁぁぁぁぁあ!!!!」
空気が張り裂けるような悲鳴が静寂を切り裂く
近くから、聞こえた
しかも 秋月 の声だ
そう思ったときには既に体は反応して走り出していた
片っ端から教室のドアを開けて彼女の姿を探す
尋常じゃねぇ叫び方だった…
以前、二人で満員電車に乗ったことを思い出す
もしあのときみてぇに男に襲われてたりしてたら
そう考えるだけで冷静じゃいられなくなる
『 秋月 ッ…!!!!』
一番端の教室を開けたとき、ようやく見たかった彼女の姿を見つけられた
「えっ…とどろき…くん?」
目をまんまるにさせぼんやりした顔をオレに向け、その姿に改めて目を落とし心臓が大きく高鳴る
秋月 の上半身は下着のみでその上に何も纏っていなかった
レースで縁取られたブラから小さな顔と反比例した胸が溢れんばかりに収まっている