第6章 𝔽𝕠𝕦𝕣 𝕠'𝕔𝕝𝕠𝕔𝕜
《爆豪side》
「あぁ、好きだ」とでも縦に首振ってハッキリしてくれたほうがこっちの気もまだ晴れる
けどコイツは、首を縦にふるどころか横にも振らず
ただオレの視線を返して、顔をきょとんとさせるだけだ
…コイツ脳みそだけじゃなく耳までイカれとンのか
段々ムカついてきて声を荒げようとしたとき
ふと、ここんところ同じような面を向けられたことが頭を過る
そもそもなんで、コイツらは付き合ってねぇんだよ
ひかりの話を聞いたときは、 ひかりの一方通行だと思ってた
が、今コイツと話せば少なからず…いやかなり狂ってるほど ひかりに気がある
でも付き合ってねぇ
それどころか、自分が相手をどう思ってるかさえ分かってねぇわけだ
余りにも馬鹿馬鹿しくてため息が出ちまう
互いにドがつくほどの天然バカで、自分の好意も相手の好意にも気付いてねぇって訳かよ
「分かんねぇ、けど 秋月 の傍にいてぇ」
『ンなことは聞いてねぇよ
分かんねぇならそれでいいわ、死ぬまで拗らせとけ』
「爆豪は 秋月 のこと好きなのか?」
『好きだわ、文句あんのかよ』
「そうか」
なにか言いたげに黙るコイツを見てると無性に腹が立った
… ひかりもコイツも、人に好意を表すのに何かしらの抵抗があるように感じる
それか、その感情に一切触れずに育っちまって、不慣れで扱い方を知らねぇ赤ん坊ようにも見える
「 秋月 が、悲しむようなことはしたくねぇ」
『はぁ?何いってんだてめェは』
「ずっと笑ってて欲しいと思う
けどオレが触れると、 秋月 の顔が曇る」
轟の顔に影が出来て、苦い表情へと変わる
… ひかりもコイツも…マジでイカれてんな
『っー……』
「…勝己…くん、と轟…くん??」
甘ったるく気だるげな声に言葉を遮られる
ほんっと、いつもタイミングわりぃんだよ