第6章 𝔽𝕠𝕦𝕣 𝕠'𝕔𝕝𝕠𝕔𝕜
《轟side》
『感心しねぇな、寝てる女に手ぇ出すなんざ』
喉の奥で押し潰されたような低い声が出た。爆豪は振り返らなくてもオレだと分かったのか、 秋月 に視線を寄越したまま返事する
「ケッ、てめェだけには言われたくねぇわっ」
オレは爆豪を無視して 秋月 の側まで近寄る
「無視かよッ」と隣で爆豪がボヤく中、そこだけ空間が違うみてぇに眠りについてる彼女を眺める
スーッスーッと小さな寝息を立ていて
閉じた睫毛が柔らかい影を頬に落としている
口元が緩んだ表情は幸せそうでいい夢でも見てんだと伝わる
夢の中だけでもいい
心から笑っていて欲しい
彼女にはどんな時も笑顔でいて貰いてぇ
オレを光で照らしてくれたように
オレも彼女を元気付ける存在になりたい
「てめェはいつまで見てンだ…」
『………………かわいいな』
「あ?」
『キスしてもいいか』
爆豪から素っ頓狂な声が聞こえてくる
『あぁ、勘違いさせちまったなら悪い
爆豪にじゃなくて 秋月 にって意味だ』
「ンなことは知っとんだよッ
てめェ自分で言ったことも覚えてねぇンか」
『だから聞いてる、 秋月 にキスしちゃ駄目か?』
「なんでオレがダメでてめェがいいンだよ
余裕でおかしいだろうがッ」
両目を釣り上げた爆豪が威圧するようにオレを睨む
けどその瞬間 秋月 が顔を顰めさせ「んん」と声を漏らす
オレたちは自然と黙り込み、互いから視線を外していた
オレも爆豪も、 秋月 を
多分…いや同じように彼女を見ていた
さっき爆豪が 秋月 に手を伸ばしたとき
その横顔がまるで、そっくりそのまま自分を映し出してるみてぇだと思った。オレが彼女を見るときの表情はこんな感じなんじゃねぇかって思っちまった
「てめェ ひかりのこと好きなのかよ」
秋月 は変わらず規則的に上半身を上下させ、瞼を閉じている
爆豪が" ひかり"と呼んでいることに引っ掛かったが、それよりも質問の方に気を取られた