第7章 *File7.*諸伏 高明*
「珍しいわね」
「…何がー?」
「酔ってるでしょ?」
「ンなことないよーだ」
「ほら、戻るわよ」
「…なんで?」
「何でって…さっきから、睨みを利かせてる怖ーいお兄さんがいるからよ」
と、上原さんの視線がちらりとこちらに向いた。
望月さんは、キョロキョロと周囲を見回して首を傾げている。
「へっ?何処に??」
「ハア」
「……」
はい。
此処にいますよ。
上原さん曰く、さっきから睨みを利かせてる怖ーいお兄さん、は。
「では、戻りますね」
「もう戻るのか?」
「はい」
「えー、残念ー」
顔馴染みの複数の低い声が重なったが、上原さんは素知らぬ顔で頭を下げて、望月さんを抱えるようにして戻って来た。
「おかえりなさい」
「ただいまでーす。飲んでますかー?諸伏さーん」
「…やはり、少々飲み過ぎなのでは?」
「大丈夫ー。まだまだ素面ですから!」
「……」
半年ぶりぐらいに参加した、捜査一課での飲み会。
頬を染めて陽気に笑い、テンションが上がってグラス片手に隣に座る上原さんの肩に凭れかかっているのを見るに、完全に酔ってますよね?
何時もの彼女なら、こんなに飲むペースは早くないし、量も少ない。
「望月さんは最近、何かあったんですか?」
「だとよ、由衣」
やはり睡魔がやって来たのか、だんだんと瞼が降りつつある完全無防備の望月さんに目を見張りながらも、そんな彼女にチラチラといやらしい視線を向ける同僚達に目線で牽制をしておく。
「そうねえ。日頃のストレスと、来月は誕生日なのもあって、ご両親に恋人はいないのかとか、将来結婚をするつもりはないのかとしつこく言われてるのと、三課のオトコに何かと言い寄られてるみたいね」
敢助君から話を振られた上原さんが、ポンポンと望月さんの髪を優しく撫でながら、指折り教えてくれる。
「確かに結婚は、そろそろ親が心配する歳ではあるな。職業も職業だしよ。まあ、その前に今は相手いねーか」
望月さんは私より六つ歳下(学年は五つ下)の上原さんと同期で、二人は警察学校からの大の親友。
本人から、此処に来る数年前から彼氏はいないと聞いてはいる。