第8章 柱稽古……とは?
翌日――柱稽古の道場。
飛羽が隊士たちを指導していると、玄弥が実弥の前に立った。
「……兄ちゃん」
実弥の眉がぴくりと動く。
「……しつけぇんだよォ」
「兄ちゃん、俺は――」
「俺には弟なんていねェ」
実弥は鋭く睨みつける。
「いい加減にしねぇと、ぶち殺すぞォ」
「……っ」
玄弥は拳を握りしめ、それでも口を開いた。
「俺は……鬼を食って戦ってる」
「…………あァ?」
実弥の表情が一変する。
「鬼を……食ってるだァ?」
「そうだ! そうしないと俺は――」
「ふざけんなァ!!」
実弥が玄弥の胸ぐらを掴む。
「テメェ、何考えてやがる!!」
「離せよ、兄ちゃん!」
「鬼なんざ食いやがって……!」
実弥は激昂し、玄弥の顔へ手を伸ばす。
「その目ェ……潰してでも――」
「実弥!!」
飛羽が咄嗟に二人の間へ割って入った。
「やめて!!」
「飛羽、どけェ!」
「どかない!」
飛羽は実弥の腕を掴む。
「玄弥は敵じゃない! あんたの弟でしょ!」
「……俺には弟なんていねェ」
「だったら、なんでそんなに必死なの!?」
実弥の動きが止まる。
しばらく沈黙した後、実弥は玄弥から視線を逸らした。
「……テメェは……」
低い声が震える。
「どっかで所帯持って、家族増やして……爺になるまで生きてりゃあ良かったんだよ」
玄弥が目を見開く。
「兄ちゃん……」
「鬼殺隊なんざ来なくてよかったんだァ。俺なんか放っといて、普通に生きてりゃよかったんだよォ……」
実弥は拳を握りしめる。
「……俺ァ、それだけでよかったんだ」
玄弥の目から涙が零れた。
飛羽は何も言わず、そっと実弥の背中に手を添える。
「……実弥」
実弥は顔を背けたまま、吐き捨てるように呟いた。
「……もう、無茶すんじゃねェ…」
玄弥は涙を拭い、小さく頷いた。
「……分かった。兄ちゃん」
実弥は答えなかった。
けれど――今度は「弟なんていねェ」とは言わなかった。