第8章 柱稽古……とは?
刀鍛冶の里から戻ってしばらく。
飛羽は蝶屋敷を訪れていた。
「しのぶ、いる?」
「飛羽さん? どうしました?」
飛羽は少し迷ったあと、深く頭を下げた。
「お願いがあるの」
「……何でしょう?」
「しのぶには……生きてほしい」
しのぶが目を瞬かせる。
「突然ですね」
「この先のこと、全部は話せない。でも……しのぶが命を懸けることになる未来がある」
飛羽は拳を握る。
「だから、絶対に一人で無茶しないで。生きるための準備をしてほしい」
「……準備?」
「うん。それと――」
飛羽は真剣な顔で続ける。
「藤の花の毒を使った、鬼に対する切り札を作ってほしい」
「切り札……ですか?」
「鬼に直接使える、持ち運べるもの。いざという時に、相手を弱らせたり動きを止めたりできるような……爆弾みたいなもの」
しのぶは目を細める。
「なるほど。つまり、私が使う毒をもっと強力に活用するための道具ですね」
「そう。具体的な作り方はしのぶに任せる。あたしには薬の知識なんてないから」
「ふふっ。随分と無茶なお願いですね」
それでも、しのぶの目には研究者としての興味が宿っていた。
「……分かりました。考えてみましょう」
「本当に?」
「ええ。ただし、扱う毒は慎重に検討します。私自身が使うものですから」
飛羽はほっと息を吐く。
「ありがとう……」
そして、しのぶの手を握った。
「お願い。生きて」
しのぶは少し驚いたあと、柔らかく微笑む。
「分かりました。ですが――」
「?」
「飛羽さんも、私を助けようとして無茶をしないでくださいね?」
「……はい」
二人は小さく笑い合った。
飛羽は胸の中で誓う。
――今度こそ、誰も死なせない。
原作とは違う未来を、自分たちの手で掴むために。