第6章 呪いの手紙と複雑な想い
蝶屋敷。
遊郭での傷も少しずつ癒え、炭治郎がようやく動けるようになった頃だった。
「炭治郎さん、手紙が届いています」
アオイから渡された一通の封書。
差出人の名を見た瞬間、炭治郎の顔が引きつった。
「……鋼鐵塚さん」
恐る恐る封を開く。
次の瞬間――。
「…………」
炭治郎の顔から血の気が引いた。
そこに書かれていたのは、刀を折ったことへの凄まじい怒り。
もはや手紙というより、呪いの文書と呼んだ方が相応しい内容だった。
「……怖い」
炭治郎は思わず手紙を握り締める。
「飛羽さんのお兄さんって……いつもこんな感じなのかな……」
その頃。
蝶屋敷から少し離れた場所。
実弥は一人、木にもたれながら空を見上げていた。
「……チッ」
頭に浮かぶのは、遊郭で血まみれになって倒れていた飛羽の姿。
「……馬鹿が」
思い出すだけで腹が立つ。
だが、それ以上に――。
「……死ななくてよかった」
ぽつりと漏れた言葉に、実弥自身が眉をひそめた。
「……は?」
胸の奥が妙にざわつく。
飛羽が他の男と話していると、なぜか気に食わない。
怪我をすれば腹が立つ。
無茶をすれば怒鳴りたくなる。
そして――無事だと分かると、妙に安心する。
「……まさか」
実弥は眉間に皺を寄せる。
「俺が、あいつを……?」
そこまで考えて、即座に首を振った。
「……んなわけねェだろォ」
ただの継子だ。
面倒を見ているだけ。
そう何度も自分に言い聞かせる。
「……そうだ。継子だからだァ」
だが、飛羽の笑った顔を思い出した瞬間。
胸が、また大きく跳ねた。
「…………チッ」
実弥は顔を覆う。
「……認めるわけねェだろォが」
自分の中に芽生えた感情から、必死に目を逸らしながら――。
それでも、飛羽の無事を願う気持ちだけは、どうしても否定できなかった。