第4章 機能回復訓練。そして…
煉獄杏寿郎の死から数日。
傷が癒えきっていないにもかかわらず、飛羽は毎日のように稽古場へ向かった。
「……っ、はぁ……!」
木刀を振る。
一回、十回、百回。
腕が痛もうと、足が震えようと止めない。
「酒の呼吸――壱ノ型!」
鋭い一閃。
「もう一度……!」
飛羽は何度も型を繰り返す。
少し離れた場所から、実弥は黙ってそれを見ていた。
明らかに無茶をしている。
傷口だって、まだ完全には塞がっていない。
それでも飛羽は、何かに追われるように刀を振り続けていた。
「……もう一回!」
その瞬間、傷口に激痛が走る。
「っ……!」
身体がふらつく。
それでも飛和は刀を握り直した。
「まだ……!」
「やめろォ!」
実弥の怒声が響いた。
「……実弥?」
「傷が開いてんだろォが!」
「でも……私はもっと強くならないと」
飛羽は刀を握り締める。
「もう、目の前で誰かが死ぬのを見たくない」
実弥は黙った。
その気持ちは痛いほど分かる。
「……飛羽」
実弥はゆっくり近づいた。
「強くなるのは勝手だ。だがなァ……」
頭に手を置く。
「死ぬほど無茶して、テメェまで死んだら意味ねェだろォが」
「……」
「煉獄はもう戻ってこねェ。だからって、お前まで死んでどうすんだァ」
飛羽の瞳が揺れる。
「……うん」
「生きろ。死ぬほど鍛えるのは、その後でいい」
「……実弥」
「今日は終わりだァ」
「でも――」
「命令だ」
飛羽は少しだけ笑った。
「……師範だから?」
実弥が一瞬固まる。
「……うるせェ」
「ふふっ」
久しぶりに笑った飛羽を見て、実弥は小さく息を吐いた。
――今は、それだけでいい。
飛羽が再び立ち上がれるようになるまで、そばにいる。
実弥はそう決めていた。