第10章 知らない女の子と五条くん
「あの時…?何のことかな?」
夏油くんは五条くんの示した「あの時」にはいまいちピンとこない様子。
2人で食事をした時に何かあったのかしらね、なんて悠長に構えた私と硝子は呆然と見つめるばかり。
私がみんなと「あの時」の思い出が沢山あるように、親友の五条くんと夏油くんにも色々とあるのだろう。
今日の出来事だっていつか「あの時」で懐かしんだり、振り返ることだってきっとある。
まだ出会って1年も経たない私達4人。
それでも全てを覚えておくことは出来ないんじゃないかしらってくらいに…思い出は増えて増えて増え続ける。
「悟だってあの時邪魔してきたじゃないか」
「あれは邪魔じゃない、助けに行ったヒーローだ」
「ヒーロー…?悟は呼んでもいないのに勝手に来ただろう?私は硝子に誘われて此処にいるんだ」
男子2人が小競り合いを始めて、硝子は退屈そうにテーブルの上を人差し指でトントンと叩く。
リズム良く指を動かしながら硝子は冷ややかな視線を投げてぼそっと呟いた。
「夏油ってさ五条に比べれば大人っぽいとこあると思ってたけど、寧々が絡むとガキだよねぇ」