第10章 知らない女の子と五条くん
「未成年なんだから子供で間違いないだろう。それとも…私が老けて見えるということかい?」
「しらばっくれるんだ?中身の話だって気づいてるのに」
「さぁね、それも何のことか分からないな」
硝子と夏油くんの間にも何かわだかまりがあるように思えた。
もしかしたら万が一には微笑ましいエピソードかもしれないけれど、お互いの張り詰めた空気感からはマイナスな感情しか読み取れなかった。
じろりと夏油くんに視線を送った硝子は顔を上げたまま、飲み終わったコーヒーカップを爪で弾く。
カンと乾いた音がして、それが開戦を告げるゴングのようだった。
「夏油…分からないフリばっかりしてるけどさ、アンタそれで良かったの?」
「硝子…さっきから何の話だい?」
分からないフリ…硝子の持ち掛けた言葉が自分の胸にも刺さる。
五条くんはパフェを食べ切るラストスパートに突入していて2人の間に介入する様子は見受けられない。
一方で手持ち無沙汰な私は2人の会話の行末を見守ることしかできない。
もう注文したものは全部店員さんが持ってきてくれたし、このマズい雰囲気を断ち切るものは何も残されていなかった。