第8章 違う人と任務
手を繋ぎあった親友同士なのに、狭い車内で小競り合いを始めた。
どう見ても夏油くんが優勢で、有罪の五条くんはしおらしくしていればいいものを…。
「悟、車内での無限の使用はルール違反だ」
「そんなルールはねぇよ」
「車内では静かに過ごすって、習わなかったの?」
任務の成功報酬として給料も発生する。
この車での行き帰りだって、仕事の範疇なのよ。
「すまない、寧々ちゃん。これ以上悟に遠慮はしたくなかったんだ」
珍しくヒートアップした夏油くんだったけど、普段の鬱憤が溜まっていたのかしらね?
歯止めが効かなくなっていたようだった。
「実質俺の勝ちだな」
どこまでも子供な五条くんは、勝ち誇った顔をする。
手に握られた呪物の残骸からは…目を逸らしながら。
「全く…悟は調子がいいね。今は悟の勝ちでも、これからは分からないだろう?」
夏油くんの示す「これから」が、この時は何だか分かっていなかった。
呪術師としての等級や力量の勝負なのだとばかり思っていた。
五条くんの蒼い瞳に見つめられて、真っ直ぐに見つめ返すことはできなかったけど、
私も五条くんの方を向こうともがいていた時
夏油くんからの視線に気づいていれば、何かが変わっていたのだろうか。