第8章 違う人と任務
水族館で見た魚のオジサンよりも、ずっとずっと可愛くて。
この子のグッズがあったら絶対買ってしまう。
「ねぇ、あなたと遊ぶ前にお願いを聞いてくれる?」
「…!いいよ!」
ナマズの顔がパッと綻んだ。
全身で嬉しいを表現して、小さな体をバタつかせている。
「この水を消してほしいの。あなたと遊ぶのに水が邪魔になるのよ」
「にんげん、おみずいやなんだね。うん、わかった!」
ナマズはにぱっと花の咲くような笑顔を見せると、押し寄せてきた波もろとも水を消し去った。
それでも服も下着も濡れたまま。
ぐっしょぐしょで気持ち悪い。
「おようふくもかわかしてあげる!」
小さなナマズの粋な図らないで(元はと言えば…という話は今は無しね)、水分がパッと蒸発していく。
自在に水を操れるというのは、服に付着した水分であろうとも対象になるのね。
「お気遣いありがとう。その…」
あなた、は名前ではないわよね。
「あなたのお名前はあるのかしら?」
「おなまえ?おおなまずだよ!」
私の問いかけに元気よく答える、大…ナマズ?
「そんなチビなのに大ナマズって、お前本当に地震を引き起こした伝説のやつかぁ?」