第8章 違う人と任務
「たすけ…っ」
波は最後の言葉さえも飲み込んで、体の自由を奪った。
エレベーターはその状態になって、やっと上へと昇っていく。
「この水を操っているのが、大ナマズかもしれないね」
「はいはい、そういうパターンね。俺達が戻ってきたエレベーターに乗っても、同じことになるわけ?」
「エレベーター以外の緊急脱出口があるんじゃないかしら」
なんて冷静にしていられるのも束の間……
水位は私の膝まで上がってきた。
五条くんが呪物に封じられていた、ナマズの逆鱗に触れたのは間違いない。
かつて巨大地震を引き起こしたとされるナマズは、呪霊となってもなお、地面を大きく揺さぶった。
「うわっ!?」「危ないな…」
五条くんと夏油くんは、何でこの揺れの中を二本足で立っていられるのよ!?
「ーーっ!!」
持ち堪えようにも、大きく揺れる地面と激しく波立つ水面に足元をすくわれる。
転ぶ…!
に、任務の最中なのに…!
任務中は転ばないなんて抜かした口が、あんぐりと開く。
「きゃっ!?」