第7章 夏休みといえば
「言ったでしょ?下心を抑えてあげるって」
「そんな物理攻撃だとは思わねーじゃん!!将来寧々との子供ができなかったらどうすんだよ!?」
そこまで飛躍するなんて…頭にも一発かましとけば良かったかしらね。
五条くんは膝立ちをしながら、ダメージを受けた急所を手で庇っている。
「くそ…っ、エロいことを期待した俺が悪いのかよ…っ」
「そういうことをする気は一切ないわ」
これでも少し甘くなったのよ?
手を繋いだり、体を寄せたり、添い寝までしたんだから。
今日だって頭を撫でさせたし、食べさせ合いもしたことあるし、大人しくお姫様抱っこだってされた。
……少しどころじゃない、かなりね。
そのどれもが「楽しい思い出」に分類されるなんて、頭の容量が足りなくなってきたのかしら…?
「いいんだ…寧々に逢わなかったら、俺は意味のない命を永らえただけ。寧々に会えて、よかった。ありがとう」
意味不明な言葉を捲し立てて、まだ痛がっている五条くんを見ると、ほんの僅かに罪悪感があるわね。
こんなに脳に支障をきたすくらいなら、せめて角ではなく背表紙全面を当てるべきだったわ。