第7章 夏休みといえば
「えっ、話したいことって?」
「2人きりの場所じゃねーとダメだ。ここじゃ話せねぇ」
五条くんは怒りを押し隠したような、冷静になろうとしているような、とにかくいつもの五条くんじゃなかった。
夏祭りを楽しんでいた時はそんなことはなく、いつものおちゃらけた五条くんだったのに。
不自然なほど急に機嫌が悪そうな顔をしていた。
「下心はない。ただ…寧々に確認したいことがある」
苦虫を噛み潰したような表情を露わにする五条くんに、いつものような浮ついた気持ちは感じられなかった。
「楽しい思い出」に感じていたのは私だけだった…?
この時五条くんが私の手を離してもまだ、自分の手を固く握り締めていたことに気付けていれば……。
その拳に込められた五条くんの感情を汲み取っていれば……。
中身が小学生の頃から成長できていないのは、私の方だったのに。
五条くんを部屋に招き入れて、ドアを閉めた途端
「寧々、俺は心の狭い男だからさ」