第7章 夏休みといえば
「よっと…!」
不覚にも五条くんにお姫様抱っこをされながら、地上に降り立ってしまった。
「は、離してよ!」
地面に足がついたにも関わらず、五条くんは降ろしてくれない。
こ、これ以上…五条くんに密着していたら、心臓がもたない…っ。
「花火も終わって人通りが増えてくる頃だ。そろそろ寧々ちゃんを解放してあげな」
「チッ…」
夏油くんに叱られた五条くんは、さも不満がありそうな顔を全く隠すことないまま、私を解放した。
「か、帰りましょうかっ」
五条くんの体から離れたのに、まだ心臓がバクバクしてる。
あんまりにもおかしいから、花火を間近で見た影響だと思い込むことにした。
おかしいのは五条くんも一緒で、「腹減った」と呟き、閉店間近の出店から食べ物を買い集めた。
駅に向かって帰っていく人、バス停で立ち止まる人、自家用車に乗って帰る人…
花火大会が終了し、人混みは激化する。
その流れに逆らうように、都内の奥地の筵山麓まで歩みを進める。
高専への階段を登り始めた時には、もう23時を過ぎていた。