第7章 夏休みといえば
ドンッと大きな音がして、夜空にパッと花が咲く。
視界を埋め尽くしていく大輪の花々。
エイの呪霊は打ち上がる花火とほぼ同じ高さに留まった。
音の衝撃なんて気にならないくらいに、目の前の花火に心を奪われる。
なんて、なんて綺麗なのだろう。
金魚よりもヨーヨーよりも色鮮やかで艶やかな花が、夜空に咲いては消えていく。
でも花火の音が外側から心臓に響いてくる以上に、体の内側からドキドキしてしまうのは…
「俺達が1番の特等席で見てるな。傑には感謝しねーと。まるで花火を独占してるみたいだ。…綺麗だな、寧々が」
「花火を見て!?」
五条くんがぎゅっと抱え込むように腕を回すから。
背中が五条くんの胸板にぎゅっと隙間なくくっ付いて。
心臓の音が背中越しに伝わってしまいそうで。
ドキドキするのに…あたたかくて。
触れているのは背中だけじゃない。
筋肉質な足に座ったところから、頼り甲斐のある腕に押さえられているところから…
耳元をくすぐる程近くで、低くて落ち着く声がする。
「見ろ寧々、人がゴミのようだ」
言っていることは最低だけど。