第7章 夏休みといえば
1つのポイで誰が何匹掬えるか、実に子供染みた勝負が持ち上がる。
五条くんが会計を済ませ、いざスタート。
「どうせ掬うならデカいやつだろ」
「数で争うんだから、大きさなんて関係ないのよ」
「悟の優勝は有り得ないだろうね」
水槽を泳ぐ色とりどりの金魚たち。
固まって団子になっているところや、単独でゆうゆうと泳ぐもの、狙うべきは
群れと離れたところにいる、小さくて動きの遅い金魚。
「おいっ!ボスが獲れたぞ!!」
なぜか大物狙いの五条くんを尻目に、着々とお椀に掬い上げていく。
「まだ破れそうにないわね」
「勝負は私と寧々ちゃんの一騎打ちかな」
横では夏油くんが黒い金魚ばかりを掬っていた。
自分の髪やピアスと同じ色だから親近感でもあるのかしらね。
お椀に掬われたおびただしい数の真っ黒の金魚が、毒々しく見えるのだけど。
「あっ!!!」「あら…」「おっと」
ポイの紙が全員破れたところで、水槽に残った金魚は僅か。
私と夏油くんのお椀の中には、埋め尽くすほどの金魚が。
五条くんのお椀の中には、丸々とした巨体を誇る金魚ばかりが。
ぱっと見体積は同じに見えるけど、今回は数の勝負だからね。