第7章 夏休みといえば
来年以降は出禁と言い渡されたので、他の露店に行くことにした。
「金魚すくいならやったことあるわ」
両親と兄と一度だけ訪れた夏祭り。
無機質な水槽に閉じ込められた金魚が可哀想で、助けてあげたいと思った。
1回だけならやらせてあげるという両親からお金をもらい、その中から特に弱り果てた赤い金魚を1匹掬った。
けれども、その1回でポイは真ん中に穴が空いて破れてしまった。
たった1匹だけ掬えた金魚を水と一緒に袋に入れてもらって、大事に持ち帰った。
この子は私が元気にする、守り抜くんだ…!
倉庫から大きな水槽を探している間に、金魚は兄の呪力によって肉片となってしまったけれど。
赤い細切れを見ながらニタニタ笑う兄に、「次は寧々がそうなる番だよ」と「嫌なら逆らわないでね」と言われた。
幼い子供の心を壊すには、十分すぎる嫌な思い出。
「今ならもっと上手に[救える]かしら…」
「寧々やりたいの?まっ、絶対に俺の方が上手いけどな」
「えっ、ええ。そうね。掬ってみたいわ」
「2人とも、どう考えても私が1番得意に決まっているだろう?」