第7章 夏休みといえば
夏油くんの呪霊操術により使役された特級仮想怨霊。
「あぁーーー!?俺のバナナを一口かよ!?」
「一口でもいいからと言ったのは悟だよ」
チョコバナナをぐわっと大きな口で丸飲みすると、何事もなかったように消えた。
……夏油くんだって、術式を使ってるじゃない。
「ありがとう。助かったわ、夏油くんと口裂け女さん」
「お役に立てて良かったよ、寧々ちゃん」
夏油くんは、わなわなと肩を振るわせる五条くんの頭をはたいた。
「そんなことをしていたら寧々ちゃんに嫌われてしまうよ」
「寧々は俺のこと大好きだからその心配はいらねーよ」
「別に大好きじゃないのだけれど」
私の答えに五条くんは悲しそうに目を潤ませた。
「寧々…っ!?」
「振られても知らないよ、悟。せっかく付き合えたんだから大切にしな」
「分かってるけどよぉ…」
「いつ誰が寧々ちゃんを奪っていくか分からないんだよ。それぐらい寧々ちゃんは魅力的なんだからね」
夏油くんに嗜められた五条くんは、不貞腐れるかと思ったのに、案外素直に受け入れた。