第1章 サンドバックちゃん
「…ごめんなさい、ごめっ…んなさい…」
なつは痛みに耐えながら謝罪の言葉を口にするが男の指が焦らすように痛む箇所を撫でていくので無意識に身体がびくんと小さく跳ねて反応してしまう。
「まだ、やれるな?」
「…………っ…」
「お前の方から"サンドバック"とやらになりたいと申し出たのだろう」
最初はつまらなさそうにしていた男だったがなつが自身の手足で痛めつけられ苦しんでいる姿を見ているうちに愉快そうに無邪気に笑う。そしてなつの髪を掴んだまま一緒に立ち上がると「あと10発だ。あと10発、姿勢を崩さずに耐えられたら今晩は勘弁してやろう」と言いながらなつの返答も聞かずになつの身体を壁に沿って立たせた。
「あ…あの…もう…」
なつは正直限界だった。
立っているのがやっとだった。
自分から申し出たと言うのに情けないと思った。
自分は男の満足いくまで耐えるつもりだった、耐え抜いた先にある男の満足気な顔が好きだからだ。
なのに。もう無理だ。身体のあちこちがズキズキと痛い。
額に脂汗が滲む。
「1発ずつ数えるんだ」
「ま、まっ…まってくださっ」
なつの言葉を遮る様に男の拳が素早くなつのみぞおちにのめり込んだ。
「ぐっ…うう"…!」
壁に沿って立った状態で拳を入れると普通に立った状態よりもダメージがより強く身体に伝わる。
なつは壁伝いにずるずるとしゃがみこんで苦しげに唸り声を上げた。
息がまともに出来ない。苦しい。痛い。痛い痛い痛い。
「おい。言っただろう」
男はなつの腕を掴みなつを立ち上がらせると「10発、姿勢を崩さずにいろと」と付け加えて言った。
「ぅ…あ…ごめ、ん…なさい…ごめんなさい…」
「"もう一度"最初からやり直しだなあ?」
男はなつの顔に脂汗で張り付いた髪を手荒く掻き上げるとその赤い四つ目を涙が溢れ今にも零れ落ちそうな瞳にじっと合わせると楽しげに喉を鳴らして笑った。
fin