第1章 サンドバックちゃん
カーテン越しの月明かりに照らされた薄暗い部屋。
ここはなつの部屋だ。
なつの身体はフローリングに横向きに倒れ、お腹を守るように丸くなり肩で息をしている。
その身体には至る所に浮き出た汗がいくつも玉となってはその身体を伝っている。
「おい」
赤い四つ目がなつを捉える。
男はしゃがんでなつの髪の毛を乱暴に掴んでは強引に上体を起こさせ強制的に目線を合わせる。
「今晩は俺を満足させると言っただろう」
なつは散々殴る蹴るなどの暴行を受けた。
何十分、いや何時間経ったのかわからない。
しかしこれらの行為は男が無理矢理行っているのではなくなつが自ら望んで男にお願いしたことだった。
鍛え上げられた逞しい男の拳や蹴りはなつの想像していたよりも遥かに強く重く、一瞬にして体力を奪った。
至る所に走る激痛と呼吸さえままならない苦しさで声も出せず息を吸って吐いてを繰り返すことが精一杯だった。
返答をすることすら出来ないなつを見た男は特に表情を変えることも無く数十分後には綺麗な赤紫色に染まるであろう薄ピンク色に腫れた太ももを指先でツー…と撫でる。
「ん…あっ…」
なつはジンジンと熱を帯びて腫れている太ももに伝わる優しく焦らすような男の指の動きに思わず甘い声が漏れてしまう。
「やはりお前はまだ"サンドバック"とやらには程遠いらしい」
男は少し呆れた様子でそうため息混じりに言う。