第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
涼しげな浴衣に着替えたひなたは、同じく浴衣姿の杏寿郎と千寿郎とひなたの部屋にいる。
千寿郎はひなたが家から持って来たスーツケースに興味深々で、中の造りを確認したり、コロコロと転がして遊んでいる。
「ひなたさん、この部分が凹んでいますね」
千寿郎君はスーツケースのペッコリと窪んだ角を眺めて言った。
「うん。それね、鬼に襲われた時に凹んだの」
部屋の中央に置かれた可愛らしいサイズのちゃぶ台にうつ伏せになったひなたは、部屋に入ってくる少しのそよ風が、気持ちが良くてうとうとしながら答えた。
裏庭に敷かれた畳石に撒かれた打ち水が、涼しい風を連れてくる。部屋は静かに翳りを帯びていくようだ。休息を取る杏寿郎達は、揃って午後の穏やかな時間を過ごしている。
「ええ⁉︎ 鬼が投げたのですか! 」
千寿郎君はビックリしている。それにしても、鬼に襲われて生きているひなたさんは、なんと運が良いのだろうと、恐ろしく思いながら。
「中に入れてた食べ物の匂いが臭いって、怒って投げたの」
「なんだ、それは。聞き捨てならんな」
それまで、ちゃぶ台の前に座って、そよ風に髪を遊ばせていた杏寿郎が、そのキリリとした目を上げて呟いた。透明感のある声が、部屋に響いている。
煉獄さんの声が心地よいひなたは、辛かった記憶を思い出しつつも、二人に聞いて欲しくて、ちゃぶ台に突っ伏したまま話した。
「私ね、お土産入れてたの。皆に色々食べさせたいから、アオイさんにアップルパイを3台も焼いてもらってたんだよ。耀哉さん達のと、煉獄さんのと、後藤さんと早苗ちゃんにもあげたかったから。なのにね、鬼になってから人間の食べ物が臭うなんて、失礼だよね!投げられたショックで、一個は壊れちゃってたの」
修正できる範囲内だったので、くっつけて耀哉とあまねにプレゼントした。