第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「お水!お水を下さい」
お台所に飛び込んだひなたは冷蔵庫を開けた。
「あらあら!ひなたちゃんたら慌てて」
炊事場でお米を洗っていた萩さんが振り向いて笑った。
「すみません萩さん、喉が渇いてしまって」
木製の冷蔵庫の中には、大きな氷がセットされていて、その冷気で庫内は優しく冷やされている。ひなたは麦茶の入ったガラスのポットを取り出した。
「萩さん、飲んでも大丈夫ですか? 」
萩さんはいつも、麦茶をヤカンで大量に沸かしてから冷蔵庫に入れておいてくれる。皆が自由に飲めるように、六条大麦の粒を炒っている姿をよく見る。
「ええ!沢山冷やしておきましたよ」
萩さんはコップを出してくれた。レトロなグラスに3つ、麦茶を注ぐ。
「美味しそう!いただきます! 」
「はいはい、どうぞ! 」
お鍋を出して夕食の準備をしながら、萩さんはにこにこと笑っている。
ひなたはここの麦茶が大好きだ。キンキンには冷えてないけれど、充分に冷たい黄金の色をした麦茶は、後味がとてもスッキリとしていて、口に含んだ時に香ばしさもあり、ゴクゴク飲めてしまう。
早く飲みたくて、でも先に飲むのは我慢して煉獄兄弟を待った。
「萩さん、お疲れ様! 」
ひなたより少し遅れてお台所に入って来た煉獄さんと千寿郎君は、萩さんを見て微笑んだ。麦茶のコップを手に取り待つひなたを見てクスクス笑っている二人は、ひなたと一緒に流し込む。
「うまい!! 」
「美味しい! 」
「美味しいです! 」
コップから唇を離して、ほぼ同時に叫んだ三人に、萩さんはついに声にだして笑い出した。
「沢山冷やしてありますからね、美味しいでしょう? 」
萩さんお手製の麦茶は、煉獄家の夏の定番のようだ。
杏寿郎は、皆が飲み干したコップに2杯目の麦茶を注いだ。
「夏は麦茶が美味いな! 」
勢いよく麦茶を流し込んでいく杏寿郎につられるようにして、ひなたも千寿郎も2杯目の麦茶を飲み干した。
「美味しいねー! 」
「はい! 」
顔を見合わせて笑い合う二人を、杏寿郎は微笑みを浮かべて見ていた。
ゆっくりと過ぎていく夏の午後。杏寿郎とひなたと千寿郎は、萩さんが用意した寒天のオヤツを食べた。