第7章 インターハイ予選までの1週間
「ぐすっ…なんなんですか三井さん…ついこないだまで不良だったくせに…うぅ…」
嗚咽混じりの声は、どこか拗ねたようで、でも確かに頼っていた。
三井は一瞬だけ視線を逸らし、小さく息を吐く。
三「…うっせー…」
三(そんなつもりがないとはいえ桜木も罪な奴だぜ。"今まで通りでいよう"なんてよ)
それ以上、何も言わなかった。
慰める言葉も、励ます言葉も出てこない。ただ、の隣に腰を下ろしたまま、同じ時間を共有する。
体育館には、の呼吸が少しずつ落ち着いていく気配だけが満ちていった。
しばらくして、ようやくの肩の震えが止まる。
三「落ち着いたか?」
は、まだ赤い目のまま、コクコクと小さく頷いた。
その様子を見て、三井は無言での手元に目をやる。
まだ開いていないペットボトル。
三井はそれを取り上げ、キャップを外すと、何も言わずに差し出した。
三「ん」
は素直に受け取り、喉を潤す。
冷たい液体が身体に染み渡り、少しだけ現実に引き戻された気がした。
三「今日はもう終わりにするか」
三井がそう言って顔を向けると、はふるふると首を横に振る。
三「まだやるのか?」
今度は、はっきりとうんうんと頷いた。
一人になれば、きっとまた花道のことを考えてしまう。
だから今は、少しでも長く、この場所にいたかった。
三(フッ…まるで子供だな。いつも生意気な口聞いてくるくせによ)
三井はわざと意地悪そうに、少しだけ口角を上げる。
三「ちゃんと手抜かずに出来んのか?俺は時間を無駄にするようなことしたくねーぜ?」
試すような言い方だった。
だがそれに対しては、逃げずに答える。
「ちゃんとやりますから…」
潤んだ瞳で、背の高い三井をまっすぐ見上げる。
その視線に、三井は一瞬言葉を失った。
三(っ…ん、んだよ…)
視線を逸らし、照れ隠しのようにぶっきらぼうに返す。
三「分かったよ…」
こうしてその日、二人はこれまでで一番長く、
無言の時間も含めて、1on1を続けたのだった。