第7章 インターハイ予選までの1週間
「好き」
震える声だった。
顔は熱を持つほど赤くなっているのに、は逃げなかった。
背の高い花道を、まっすぐ見上げて――
幼い頃から、十年以上胸にしまい続けてきた言葉を、ついに口にした。
花「おぉ!知ってるぞ!だって俺はお前の親分…」
「そうじゃなくて…」
花「ぬ?」
は一度、息を吸った。
ここからは、もう誤魔化せない。
「花道のこと、恋愛の意味で好き。花道が晴子ちゃんを好きなのと同じように、私も花道が好き」
花道の目が、みるみる見開かれる。
花「え……えぇ!?が、おおおおおお、俺を好きぃ!?」
「うん。ずっと好きだった」
即答だった。
揺れも、迷いもない。
それだけ長い時間、この想いを抱えてきたのだ。
花「いやしかし俺には晴子さんが…」
「知ってる。別に伝えたからどうだってわけじゃないよ。ただ…ただ、私の気持ちを知って欲しかったんだ。それだけ」
そう言って、は視線を落とし、静かに一歩引いた。
これ以上、花道を困らせるつもりはなかった。
踵を返し、階段を降りようとした、そのとき。
花「待て」
短い声。
けれど、確かに呼び止められた。
は足を止め、振り返る。
花「ありがとよ、こんな俺をずっとそう思っててくれて。でも俺は…俺は多分、当分晴子さんへの想いが変わることはねぇ」
「うん」
想定していた言葉だった。
心のどこかで、ずっと分かっていた答え。
――ここまでは、覚悟していた。
傷つかないわけではないけれど、耐えられると思っていた。
花「それでも、ずっと今まで通り変わらず接してくれるか?俺と今まで通りの関係でいてくれるか?」
この言葉も。
「うん。もちろん!」
だから、このときのは笑顔だった。
「花道、部活行こっか!」
花「おう!」
二人は並んで歩き出す。
表面上は、何も変わらない。
――まるで、何事もなかったかのように。
望んでいたその形が、のちに一番苦しい形になるとも知らずに。