第7章 インターハイ予選までの1週間
― 放課後 ―
は急いで荷物をまとめ、教室を飛び出した。
しかし廊下に出た瞬間、手首を掴まれる。
流「おい」
「なによ流川。私、急いでるの。離して」
流「昼間は悪かった」
「……なにが」
流「お前の気を悪くさせるつもりはなかった」
足を止め、はゆっくりと振り返る。
「……」
流「昼間言ったことも嘘じゃない。でも俺は……お前があの人の娘じゃなくても、あの人から教わってなくても、俺はお前と1on1がしたい」
「私がさっき怒ったから、そう言ってるんで……」
流「違う」
が言い終える前に、きっぱりと否定する。
流「俺がお前と1on1をしたいと思ったのは、お前の父親が誰か知る前だ。お前のプレーを見て、そう思った。……最初はな」
「……今は?」
問いかけに、流川は一瞬言葉に詰まった。
「?」
流「……」
ほんのわずかな沈黙。
流川は迷った。
「との1on1が楽しい」と言うか、
「と過ごす時間が楽しい」と言うか。
後者を口にした瞬間、自分でもどうなるか分からなかった。
だから――
流「……お前との1on1が楽しいから。ただ楽しいから。それじゃダメか?」
は、しばらく流川を見つめていたが、やがて小さく息をついた。
「……はぁ。あんた前私のこと嫌いとか言ってたけど、本当は好きでしょ」
流「!?……別に」
一瞬、確実に動揺が走る。
自分の中で芽生え始めた感情に、流川自身もまだ名前をつけられていなかった。
「ふーん。あっそ。私は前より、嫌いじゃなくなったよ」
その言葉に、流川は目を見開いた。
今まで一度も向けられたことのない視線。
少し柔らかくなった声。
廊下に、気まずくも妙に静かな空気が落ちる。
流川は何も言えず、ただの顔を見つめていた。