第11章 恋慕3−2 花の裁き ヤンデレEND【家康】R18
家康は効率よく政務をこなし、自分が不在でもある程度回るよう、信頼できる家臣に諸々の指示を与えてから牢に戻った。
名無しはまだ眠っていた。
彼女は確かにここにいる、誰の目に触れることもなく。
心から安堵し、額に口づけてから隣に横になった。
何より愛しい存在を感じながら、いつしか家康も幸せな微睡みに落ちていく。
やがて名無しが小さく身動いだ。
その気配ですぐに家康は目を覚まし、ガバっと体を起こして隣を見やると、彼女は睫毛を震わせてそっと瞼を開いた。
「名無し、目が覚めた?…大丈夫?」
ぼんやりと淡い光を宿す瞳に、心配そうに覗き込む家康の顔が映る。
「…」
「水、飲んで。少しずつでいいから」
彼女はまた人形のようになっていた。
言われるがままに体を起こして水を飲み、家康が家臣に命じて持って来させた温かいお粥も口にした。
「いい子で食べられたね」
家康は壊れ物に触れるようにそっと抱きしめて、髪を撫でながら、優しい声で語りかける。
「体は大丈夫?どこか痛いところはある?ごめん、無理をさせすぎた」
「…」
しばらく話しかけ続けたが、彼女は何も反応しない。
「何か欲しいものがあれば言って。できる限り用意して、少しでも快適に過ごせるようにする。……これからずっと、ここで暮らしてもらうから」
「…」
彼女が嫌がりそうな事をあえて言ってみても依然として無反応で、家康は寂しさとも虚しさとも、苛立ちともつかない、何とも言えない感情を覚える。
「……閉じ込めたって、名無しの心が伴わないのは当然だ。俺のせいで悩ませて、今更、一片の曇りもなく気持ちを通わせられるはずなんてない」
まるで独り言のように、家康はぽつりぽつりと思いを口にした。