第12章 *File.12*(R18)
「雪乃」
「!」
あれから三日後、上への報告やら事務処理やら全てを終えて、ようやく自宅に帰って来れた。
事前に連絡は入れたのに返信はなく、何時ものように、玄関に出迎えすらない。
そのまま雪乃の部屋へ向かってみれば、少し開いた窓の向こうのベランダの手すりに腕を置いたまま、振り返ることもない。
小さな背中は、確かにオレの声に反応したはずなのに。
「ただいま」
「……」
「どうして泣いてるの?」
後ろから手すりに手をついて閉じ込めると聞こえた、小さな嗚咽。
「……ごめん、なさい」
「理由は分かってる。でもその件に関しては、オレも謝らないと。ごめん」
「?」
「雪乃が部下に嫉妬したって分かったから、凄く喜んだ」
「…ふふ」
微かに笑い声が聞こえて、安心した。
「後は?」
涙のワケはまだあるよね?
「景光に、ずっと逢いたかったの」
「オレも」
雪乃はクルリと身体を回転させると、細い腕をぎゅっと背中に回して抱き着いて来た。
「おかえりなさい」
「泣き虫」
この指でキミの涙を拭くのは、もう何回目だろうな。
「…景光の所為」
「じゃあ、ゆっくりと時間をかけて謝らないとね」
「…それは、エンリョします」
ツツーッと視線を逸らされる。
「大丈夫。明日は仕事が休みなの、知ってるから」
「!?」
ニッコリ笑って雪乃を抱き上げると、伸びて来た指先は首の後ろに回される。
「ん?」
「狙って、た?」
「偶然、だよ?」
「……」
オレの心を読もうとするような、疑い深く鋭い視線。
「信用してくれない?」
「今はしない!」
「くっくく」
プイと顔を背けるから、当たり。怒った?と、耳元で囁けば、やっぱり頬を赤くする。
「でも今日だけは…」
「だけは?」
「許してあげる」
「だったら、手加減しないよ?覚悟して」
「えっ?」
驚いて瞳を見開いた雪乃を柔らかなベッドに下ろすと、溜め込んでいた感情を一気に解放して、噛み付くように口付けた。