第12章 *File.12*(R18)
そうしたら、もう雪乃の存在を隠さなくていい。
だけど、それで本当に、雪乃を安心させることが出来るのか?
彼女の中にある不安要素を、少しでも取り除くことが出来るのか?
分からない。
けれど。
「それでも…」
順を追って、まずは婚約。
しようか?
雪乃。
「雪乃は?」
『やっと寝た。帰るまでにはまだしばらくかかる』
「…そうか」
『このままお前の家に送るが、構わないか?』
本当は今直ぐにでもゼロから奪い返して、この腕に抱き締めたい。
だが、任務中の今は公私混同はご法度だ。
今は割り切るしか、術がない。
「頼むよ。何か言ってたか?」
『言うわけがないだろ?相手は誰だと思ってる。ただ…』
「……」
『俺達の身を案じていた。例え、それぞれがどんな任務についていたとしても、な』
「雪乃らしいな」
『アイツの本音を聞き出すのは景光、お前の役目だろ?』
「ああ。かなり手こずるけど」
『お前でも、か?』
「とてもね」
スマホ越しに聞こえる雑踏。
ゼロの車のエンジン音。
まだ、高速道路の何処かのSAか。
『そろそろ行くぞ』
「有難う、ゼロ」
『ああ』
無防備であの可愛い寝顔をゼロに見せていると考えただけで、現状を忘れ去ってこの心は嫉妬で酷く狂いそうになる。
相手がゼロだから安心だと言う反面、同じぐらいに不安でもあるから。
だけど、きっとゼロにはこんなオレの気持ちですら、安易に予想出来ているはずだ。
「ハア」
たった数日離れているだけなのに、今は雪乃、
ただ、キミに逢いたい。
暗闇の中で瞼を閉じて、キミの笑顔を思い出す。
せめて今眠るキミが見ているだろう夢の中にオレがいて、優しく笑い合えていますように。
そう、切に願いながら……。