第10章 *File.10*(R18)
あの景光が、夢中になるのも無理は無い。
こんな笑顔を見てしまったら、雪乃に惚れずには、雪乃を愛せずにはいられないだろう?
この笑顔を傍で見つめて、雪乃の存在を独り占めして、この手で守って、ずっと抱き締めていたくなるだろう?
一人のオトコとして。
「楽しみにしてるね」
「はいはい」
瞳に溜まっていた涙が白い頬を滑り落ちるのを拭いながら、ため息を付いた。
「また、来てもいい?」
「ああ」
今度は安心したように笑って、風見と共に踵を返した。
「あ」
「ん?」
思い出したように、風見が開いた扉の前で振り返る。
「おはよ、ゼロ。それから、いってきます」
「おはよう、雪乃。いってらっしゃい、気をつけて」
「うん!」
雪乃は笑顔で頷くと、今度こそ、扉の向こうへと歩いて行った。
「…ったく、どれだけ可愛いんだよ」
出会って暫くしてから、雪乃に魅かれている自覚は少なからずあった。
あの時、松田と共に、景光に恋敵として堂々と宣言をするぐらいには。
だけど、20年以上も景光の幼馴染をやって来て、今日ほど彼を羨んだ日は、一度も無いよ。
「ハア」
病院内の朝が始まる時間、既に開けられたカーテンの外の朝焼けを見つめながら、ため息をもう一つ洩らす。
「写真を撮りたかったのは俺の方だよ、雪乃」
きっと、死ぬまで忘れない。
俺を想うがために流したあの温かい涙と、俺だけに向けられた、雪乃のあの無邪気で優しい笑顔だけは、絶対に。