第10章 *File.10*(R18)
「…雪乃?」
少しの沈黙の後、回していた腕をゆっくりと解いて、膝立ちでオレの方に向き直る。
「あちこち、傷だらけね」
「深い傷はないよ」
また今にも泣き出しそうな、潤んだ瞳。
伸ばされた指先は、オレを労るようにそっと頬に触れる。
「……」
それからオレの頭を包み込むように、ふわりと優しく抱き締められた。
「生きていてくれて、有難う」
「この世界に、キミを一人遺しては逝けないよ」
「ホントはね…」
「うん」
「物語の中で、貴方の生死は不明、なの」
「…不明?」
「スコッチは潜入時の偽名も不明で、本名が判明したのは自決した後。スコッチとして亡くなったのは本当。でもあの時、本当はライでありFBIでもある赤井さんに助けられたんじゃないかって…最後の最後で、彼らとたった一人で闘うゼロを助けるために、今は何処かでひっそりと傷を癒してるんじゃないかって考えるファンも、たくさんいるのよ」
「だから、雪乃はこの世界に来た。真相を知るために」
「でも結局、その真相は未解決のままね、この世界でも」
解かれた腕の向こうにあったのは泣きそうな、でも不安が消えた安堵した笑み。
「何時も心配かけてばかり、だな」
「そうね。でも…何があっても私が貴方を愛してることだけは、何一つとして変わりがないの」
「…有難う」
「もっと酷い怪我をしてるんじゃないかって、生命の危険があるんじゃないかって、不安と心配で仕方なかった…ゼロ達も、無事?」
「ゼロの怪我は酷いかな。でもライやFBI、コナン君達も大なり小なり怪我はあるけど、みんな無事だよ」
「…彼らは?」
「ベルモットだけは、辛うじて生き残った」
「そっか。コナン君を庇ったでしょう?彼女、本当は組織の壊滅を望んでいたし、工藤君と毛利さんをAngelと呼んで、とても大切にしていたから」
「どうして?」
「アメリカでね、変装してたベルモットを助けたのが、あの二人なの。みんな、色んな縁が何処かしらで繋がってる…これから先、みんなが幸せになれるのなら、それが一番いい」
「そのみんなに…オレはいる?雪乃はいる?」
やっぱり、自分のことは後回し。
「…景光と、私?」
身体を引き寄せて、額をくっつける。