第4章 初任務・風ノ国の要人ドロ!!
「目標との距離は?」
「3m、いつでもいけます…!!」
「やれ」
カバネの巨体が、草木を掻き分け、その獰猛な肉体が標的を捉えた────!!
「捕獲しました!」
「うえ~こんなのペットにしてる奴が同じ里とか、オレ無理…」
『体色は青の斑点、右前脚が一本欠落、ピンクのリードのようなものを装着。目標に間違いありません。』
「よしっ。”迷子の天使ちゃん”捕獲任務完了だな。」
”迷子の天使ちゃん”こと、ミズタマオニサソリ──湿気の多い場所に生息する、特定監視生物である。
その毒針に刺されると、同じような斑点が身体中に浮かび上がり、あらゆる神経系を阻害。人形のように身体が動かなくなる中、死に至る。
ニマニマと満足そうなカバネが、注射器らしきものを取り出して毒を採取するのをムクロもカルタもしっかり見た。が、触らぬカバネに祟りなしである。
「ちょーちょの標本を収集してた時はマシだったな~」
『昆虫本体を飼うよりはマシだと思うけれど…』
「そうなったらオレ、絶対引っ越すかんね。双子の縁も切る。」
現在、カバネの収集癖は昆虫の毒に移行したらしい。
これまで集めた蝶の標本は、飽きたとポイと捨てられ、それを燃やした火でじゃがバターを作ったのが昨日。
それを知らず食べたムクロは全部吐き戻し、双子の大喧嘩に発展した。
『あなたが引っ越すんじゃなくて、今回の依頼主のところにカバネを押し付ければいいよ。』
と、カルタは”迷子の天使ちゃん”に頬ずりしている今回の依頼人を見ながら言った。
「鹿せんせー、あの人、しょっちゅうキモイ虫逃がしてるってマジ?」
「…まあな。」
『危険人物…』
「資格はきっちり取ってるだけに、誰も文句言えなくてな…レアな昆虫毒が役に立つのも事実だが…」
「飼ってる虫に刺されてポックリ逝かねーの?」
「刺されたことは何回かあるらしい。が、一度も死んでないどころか、何の異常も来さずピンピンしてる。」
ウェ…と、シノの虫を噛み潰したような顔のムクロを横目に、毒々しい色の蠍のお手製リードを引き、問題の飼い主はお礼を告げて去っていった。