第1章 *
「あれ?はなも一緒だったのか」
「お兄ちゃん、私が声かけちゃったの。はなちゃんも一緒に遊んでいいよね?」
「まぁ俺はかまわねーけど、ヤマトはいいのか?」
正直、ヤマトくんとはあまり話したことがなかった。
太一と一緒にいる時に、ヤマトくんが太一に挨拶をして私も横で会釈する程度の仲だった。
「まぁ、いいんじゃないか?」
ヤマトくんはあっさり私の同行を許可してくれた。
私の通っている高校は全寮制なので、これから太一の寮に向かう予定らしかった。
私も3人の後をそろそろと着いて歩いた。
太一の部屋に入ると、3人は各々好きなところに座り談笑し始めた。
私も適当なところに座り、話に混ざった。
ヒカリちゃんは今実家で両親と3人暮らしをしていて、たまにこうして集まっては近況報告をしているらしい。
ヒカリちゃんの同じクラスにはヤマトくんの弟のタケルくんという子も居るらしく、ヤマトくんもヒカリちゃんの話を楽しそうに聞いていた。
たまに3人の口から、デジタルワールド?とかデジモン?とかよく分からない言葉が出てくるが、何かのゲームの話なんだろうか。私はよく分からないまま、気にせず話を聞いていた。
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楽しい話もつかの間、もう時計は18時を回りそうだった。
「もう外も暗くなってきたし、そろそろ帰らないとな。ヒカリ、家まで送るよ。」
太一がそう言って、ヒカリちゃんのカバンをヒカリちゃんの側に置いた。
「ありがとう、お兄ちゃん。いつもごめんね。」
ヒカリちゃんはカバンを肩にかけて立ち上がった。
「じゃあ、ヤマト。ちょっと行ってくるから。」
太一はヒカリちゃんの後を追うように部屋を出ていった。
ばたん、と音を立てて扉がしまった後、しばらく沈黙が続いた。
なぜかヤマトくんと2人きりにさせられてしまい、この沈黙が気まずかった。
先に沈黙を破ったのはヤマトくんの方だった。
「今日は、悪かったな。」
「…え、あ、ううん!楽しかったよ!」
私はあからさまに変なテンションで答えてしまった。
そんな私を見てヤマトくんは、ふっ、と鼻で笑った。