第7章 リヴァイ 悪戯
トロスト区の調査兵団本部の中庭は庭というよりただの草だらけの広場だった
それを2年かけてアンナがコツコツと手入れをして 今は家庭菜園を越えたレベルの畑になっていた
きっかけはウォール・マリアが陥落して 極端に手に入る食料が偏ったのと 値段の高騰だった
ここで収穫された野菜が兵団の食事に並ぶようになると 今まで茶色だった食事に彩りが加わり トレーの中がすこしだけ華やかになった
夏になり赤や黄色のミニトマト 翡翠色の茄子 ピーマン 胡瓜 とうもろこし など沢山の実をつけている
アンナは今日も朝早くに起きて 広い畑に水を撒いていた
所々に置いている大きな木の桶はミケが古い倉庫にあったのを見付けて修理してくれた その桶に筋トレ代わりに丁度いい と言って何人かの団員が交代で水を入れてくれる
手入れはアンナがする事が多いけど手伝ってくれる団員もそれなりにいて畑は段々と広くなった
「今日は俺だけか?」
あくびをしながらリヴァイが上呂(じょうろ)を片手に持ち歩いて来た
「おはよう 早朝に来てくれるのはリヴァイくらいだよ」
アンナとリヴァイがくだけた喋り方をするのは同じ時期に調査兵団に入ったからで イザベルは団員ではないアンナとは仲良くしていた事をリヴァイは知っている
2人を亡くしたリヴァイの傍に寄り添ってくれたのもアンナだった
地下街育ちのリヴァイは野菜が実をつけるのを見た事が無かったから 朝早くに来ては珍しそうに観察しながら水やりをしてくれる事が多い
「俺が水を撒くから お前は収穫してろよ」
「うん ここの一画が終わったらするね」
2人は黙々と水を撒き アンナは篭を持ってきて収穫を始めた
4個目の篭を手にアンナは果物とハーブと葉物を植えた一画に行く
「あっ赤くなってる!ねぇリヴァイ来てよ」
近くの桶にいたリヴァイに立ち上がったアンナは手招きをした
「見てよ赤くて可愛いでしょ?」
並んで座りアンナは赤く熟れた実をリヴァイに見せる
「これがラズベリーの実なんだよ」
アンナは一粒口に入れると「甘酸っぱくて美味しい」と笑う
訓練やトレーニングで引き締まっている団員達とは違い 職員であるアンナはふっくらとしている 丸顔のアンナが笑うと
『猫が昼寝してる顔になるんだ』
リヴァイはイザベルの言葉を思い出した