第12章 懐かしい顔と新しい顔
「…あなたも随分変わった人ね。それで?何を知りたいの?」
彼女が聞くと、サソリは札を下ろして構えをやめた。
「…そうだな。まずは名前から聞こうか。」
「エニシよ。」
「ふざけてるのか?」
「…なら、ユキ、と。」
サソリはそれを聞き、エニシの話を思い出す。
『色々な夢を見たんです。どれもこれも悪夢だったけど、不思議と怖いとかは思わなかったんです。かなりぞっとする場面もあったんですよ。なのに、怖いって微塵も思わなくて、悲しいだとか悔しいだとかふざけるな!みたいな想いばっかりでした。』
エニシの見たそれは’’過去’’の出来事ではないか、とサソリは思っていた。
経験の追憶。
’’人生の経験’’の数だけ名前がある筈だ。
となると、ユキという名はどうにもしっくりこない。
ーカマをかけてみるか。
「嘘だな。ユキは本当の名じゃない。」
「…何故そう思うの?」
「そう言う時点で正解を言っているようなものだって知ってるか?」
見透かすように笑うサソリに、彼女は分かりやすく眉を顰めた。
「…ライールよ。けれど、この名前は嫌いなの。」
「ライール…。言いにくい名前だな。」
「嫌だと、今言ったばかりよ?」
鋭い目を向けられたサソリは飄々と肩をすくめる。
「それで、お前の正体は何だ?」
人のようで人ではない、そんな印象のライール。
サソリはその正体を知りたくなった。
「言いたくない、と言ったら?」
ライールが嫌そうに目を眇めると、サソリは持っていた札をひらひらと見せ付ける。
「方法は一つじゃない。」
それを聞いた彼女は、目を伏せ、怒りを逃がすように深くため息をついた。
「見たところで面白くも何もないでしょうに…。」
そう言って戻ってきた目には写輪眼が浮かんでいて、あっという間に幻術に引き込まれる。