第47章 水柱・冨岡義勇
さつまいもを飲みこんだ義勇は丼と箸を一度卓に置き、右手を胸に当てた。
トクン、トクンと規則的に心臓が動いている。
「(一人で食べる時とは違う…)」
「どうした? 冨岡! 腹でも痛いか? 食べないなら俺が頂くぞ」
「ダメだ。俺の昼食だ」
「そうか! 君も気に入ってくれたのだな?」
おかわりを頼むと、炎柱は店員に声をかけ、本日4杯目のさつまいもご飯を注文した。水柱は再び丼と箸を持ち、食事を再開する。
「(うまい…俺もおかわりをしよう)」
その後は二人共にさつまいもご飯をひたすら注文し、この日の提供分を空にした。
「今日はありがとう! 君との勝負も食事も実に楽しく、有意義な物になったぞ。 良ければまた頼む。息災で過ごせ」
「…煉獄」
「何だ! 今度こそ腹が痛いか?」
「いや、腹の調子は大事ない」
こちらこそ次回はまた頼む —— 義勇はそう伝えたいのに、何故か言葉が喉の奥に引っ込んでしまい出て来ない。
「ん?」と目をカッと見開きながら、杏寿郎は水柱の返答を待つ。
せっかちな彼だが、人の心の機微をはかるのは得意だ。故に今からきっと大事な事を自分に言ってくれるであろう予感をひしひしと感じながら、その場に留まった。
「次回は鮭大根だ」
「ああ! 承知した、またここに来よう!」
肝心な事は抜けてしまったが、杏寿郎はきちんと理解してくれたようだ。手を上げながら炎の羽織を翻した彼は、義勇が進む方向とは違う方へ歩いていく。
「(伝わった…)」
義勇の胸の中が再びあたたかい物で満たされる。
実弥や小芭内ともこのように交流してみたいと実は内心思う事もあるのだが、彼らとはなかなか互いの意思疎通は上手くいかない。
「(煉獄はやはり凄い男だ。沢渡はまた良い師範に巡り会えたのだな)」
そう言えば鱗滝に文を書いていない。ふと己の師範の天狗面がポンと脳内に浮かぶ義勇であった。