第30章 螺旋の薔薇【🌟 → 主 ← 🌹 ✉️*】
それは夏の終わりの、月のさやかなある宵。
エスポワールの街での天使狩りを終えた、
ボスキ、アモン、ラムリ、ラトの四人が、ヴァリスとともにデビルズパレスへと帰宅した。
「ッチ、奴らはキリがねえな」
古ぼけた布で己の武器である青い刃の日本刀の刃を磨きながらボスキが舌打ちする。
ラトは妖しく微笑みながら唇をひらいた。
「くふふッ……いいではないですか。壊すべき対象である、
天使のほうから私達のところへとやって来てくれているのですから」
「ちょっ……ラトさん。眼が怖いっすよ」
アモンの声にラムリが頷く。
「そうだよ。ラトっちてっば、一人で五体の天使を倒しちゃうんだから!
本当、………ラトっちは天使狩りの時楽しそうだよね」
「おや? 当たり前ではありませんか。
この世界の元凶である天使たちを壊す行為が、楽しくない訳ないでしょう?」
「いや、ラトっち……! 殺気しまって! 主様が怖がってるじゃん!」
その言葉に、ヴァリスは色を失ったおもてで微笑んで見せる。
「平気よ」
「主様、大丈夫かよ。顔が真っ青じゃねえか」
触れようとしたボスキの指をそっと避け、歩こうとして脚がふらついた。
「あっ……。」
くん、とドレスのスカートに足を取られ、転びかけた彼女に指を伸ばす。
「主様!」
アモンが触れるより先に咄嗟に彼女を抱き上げたラムリが、
「主様、このままお部屋にお連れしていいですか?」と問うた。
「う、うん。ごめんなさい、………お願いします」
きゅ、と彼の魔導服のジャケットを掴む儚い指。
それを見届けた後、再度唇をひらいた。
「ボク、このまま主様に付き添ってるね。ナックに聞かれたら誤魔化しといて!」
コツ、コツ……と彼の靴の踵が床を打ち付ける音が遠ざかっていく。
その後ろ背を見送りながら、アモンの胸の内で疑心の棘が宿り始めた。
(ラムリ……なんか浮き足立ってるっすね)
その背は何処か嬉しげに震え、大事そうに彼女を抱えている。
「アモン、何をしている。
お前、俺に稽古を付けてくれて言ってなかったか?」
ボスキの声に我に返る。
「はいはい、今行くっすよ!」
訝しげな顔をする彼のほうへと歩み寄った。