第6章 デートの練習
それから一転して、五条先生は正面を向き、帳の中に入るかのような仕草をした。
「じゃあそろそろ渋谷事変、僕の生解説行くよ」
先生の声のトーンが勢いよく上がる。私も五条先生の真似をしてドアを押すみたいに手をかざしてみた。
もちろんそこに帳はない。だけど……。
――闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え
心の中で唱えると、帷がそこに降りていく気がした。黒い渦のような物が辺り一面に被さってドーム型に広がっていく。
それは瞬く間に周辺の建物や看板を飲み込み、空にも侵食し、渋谷の中心街をすっぽりと覆う。渋谷事変の入り口に五条先生と二人で立つ。
「ここに来た時、いつもの任務と何か様子が違った?」
「んーそうだね。随分と手の込んだ帷を何層も降ろしてわざわざ僕を呼び付けたってことは、なにか仕掛けてきたんだろとは思ったね」
「そっか」
特級クラスの呪霊がヒカリエの地下にいることはすぐに気取ったらしい。それらが京都校との交流戦で侵入してきた奴らだってことも。
「七海からツギハギ呪霊の報告も受けてたし、火山頭と独活は僕も見てる。徒党を組んだ特級呪霊と呪詛師が勝負を挑んできたんだろうって思ったよ。しかもこの僕にね」
「うん」
単独で現場に向かう事に不安は全くなくて、むしろ一人の方が平定しやすいと上の判断同様、五条先生も思っていたようだ。